新次元の船舶設計
by Tapio Hulkkonen, Director at NAPA Design Solutions
21世紀における高度な自動設計を実現するするためには、十分な時間と多方面の協力が必要です。
今日の船舶設計
今日の船舶設計では、3次元CADが当たり前のように使われるようになりました。それにも関わらず、船級協会の基準を満たすためには2次元に置き換えなければならない現実があります。そして、船級協会の承認後、設計者はフィードバック内容を踏まえて再度3次元に戻す作業を行っています。これは明らかに非効率的で、時間のかかるプロセスです。
最近、造船技術者の同僚と私は、従来的な手法で標準的なタンカーの構造設計をするのにおよそ3,200時間かかると見積もりました。そのうちの約30%(960時間)が図面作成、約65%(2,080時間)が計算作業に費やされています。クルーズ船の設計では、一般的にこの10倍の時間がかかると見積りました。
設計現場のジレンマ
大多数の造船会社では、複数の文書を用いて設計作業を行っており、それらは常に最新状態となるよう各々更新されています。 これに対し、信頼できる唯一の情報源を用いて作業が出来るようになると、時間を節約し、手戻りリスクを軽減し、船主ニーズの変化に柔軟に対応できるようになると考えられます。しかしながら、現在の設計現場では、このような状況は実現していません。
2019年時点では、外航船を建造する造船所の95%以上が、設計作業の少なくとも一部に設計ソフトのNAPAを使用しています。 この優位的な立ち位置から、私たちは建造やNAPA使用に関する膨大な事例を目の当たりにすることができ、設計者が実現したいことについて生の声を聞くことができます。 大多数の設計者は、現在の非効率な設計プロセスを変えていく必要性を認識しています。しかしながら、そのためには1つの情報源を用いて作業できるようにならない限り設計プロセスは変えられない、という「鶏と卵」の関係があると私たちは考えています。
将来への道すじ
実務の実態をよく理解し、このジレンマを克服するために、私たちは日本海事協会とジャパンマリンユナイテッド株式会社(JMU)と共同で技術検討プロジェクトを実施しました。 2019年の年末にかけて、3次元CADモデルを使用した3DMBA(3Dモデルベースの図面承認)に関するフィジビリティスタディを完了しました。フィジビリティスタディでは、JMUが3次元CADソフトウェア”NAPA Designer”を使用して、大型鉱石運搬船の3次元モデルを作成しました。
調査の結果、2つの結論に達しました。第一に、複数のプログラムを習得する必要性が無くなり、同一人物が複数の規則チェックや設計修正を簡単かつ効果的に行えるようになったことです。そして第二に、船級承認に必要な情報が、最も広く使用されている船舶設計用ソフトウェアであるNAPAを通じて確認できたということです。
この記事の全文は以下から読むことができます(40〜41ページ)。
原文は2020年12月にShipbuilding Industry第5号(Yellow&Finch Publishers社発行)に掲載されました。