Skip to content

「スタジオ」が切り開く海運の脱炭素化への道

音楽で有名なアビーロードスタジオを想像してください。そこには、天才的なドラマー、ベーシスト、シンガー、ギタリスト、ピアニストが集まり、グローバルチャートを席巻する新曲を創り出すために才能を結集しています。今、もし私たちがその創造的で協力的なレシピを、海運の大きな課題を解決するために応用できたらどうでしょうか?これがNAPA Studiosが目指すところです。

たとえば音楽家の代わりに、NAPA Studiosは船主、傭船者、造船会社、船級協会、銀行、保険会社などを一堂に集めます。しかし、まるでバンドのように、彼らは多様な専門知識を持ち寄り、ユニークなものを創り出します。それは、今日の海事産業が直面している最重要課題に対する革新的な解決アプローチだと考えています。

海事産業に求められる変化の大きさと複雑さ、それが加速度的に進行していることから、新しいアプローチが必要です。簡単に言えば、私たちは代替燃料を動力源とする新しい船を創造するだけでなく、非常に多様なグローバルフリートのすべての船舶に適したシステムを選択する必要があります。技術選択を超えて、ネットゼロ海運を可能にするために変革されるべきは、新燃料や技術の安全な利用を確保するための安全保障措置から、脱炭素型海運に適したコスト分担メカニズムや契約枠組みに至るまで、運用全体のエコシステムです。

これらの課題は、一つの技術や組織だけでは解決できません。代わりに、これらの問題をうまく舵取りするためには、海事産業の運営方法における大きな変化が必要であり、より密接で強化された協力が求められます。しかし、実際にそのような協力が行われるためには、信頼と透明性が必要であり、それはデジタル技術の基盤の上に築かれます。そこでNAPA Studiosが有意義な違いを生み出すことができるのです。

点と点を繋ぐ

実際にはどのような形になるのでしょうか?NAPA Studiosが手がけるプロジェクトは、音楽のジャンルほど多岐にわたります。それでも、共通する点が一つあります。それは、NAPAの先進的なソフトウェア、パフォーマンスモデル、デジタルツイン、データサイエンス、シミュレーションツールなどの経験と資産を活かして、新たな洞察と解決策を生み出すことです。これにより、船舶設計から運航に至るまで、デジタルシステムを核とした幅広い海事関係者の専門知識が集結し、パートナーシップが育まれます。

あるコラボレーションプロジェクトでは、風力補助推進装置のような脱炭素新技術導入が実際にどのような意味を持つのか、より明確にすることを目的として、、Norsepower社および住友重機械マリンエンジニアリング社との最近のシミュレーション研究を実施しました。本研究では、風力推進と運航最適化の組み合わせの利点を評価し、平均で最大28%の排出削減の可能性を見出しました。

他の進行中のプロジェクトでは、設計から運航に至るまでのデジタルツインの活用を進め、船舶の安全性、効率性、環境性能を向上させることを目指しています。具体的には、適切に管理された船舶固有の設計データを使用して、運航効率や安全性を改善し、船舶保守を効率化・高度化させ、また、運航データを造船会社にフィードバックして将来の設計を改善することが可能になると考えています。これはデータ共有における画期的な進歩であり、造船会社と船主間の新たなビジネスモデルが、排出削減やエネルギー効率の高い設計開発を加速させる変革的な影響を与えることになるでしょう。

また、ネットゼロへの移行に必要な新しい運用枠組み開発もNAPA Studiosの活動の一環となります。NAPAの技術に支えられたBlue Visbyが示すように、すべての関係者から信頼される堅牢なデジタルプラットフォームは、すべての利害関係者を共通の目標に向けて足並みをそろえるのに役立ちます。航海に関わる全関係者を新たな契約の枠組みや共有の仕組みに巻き込むことで、分断されたインセンティブに対処し、排出削減を加速することができます。

さらに、NAPA Studiosは、個々の造船会社、船主、傭船者、およびその他のサプライチェーン関係者と直接協力し、データ分析とシミュレーションツールを使用して実際の問題を解決するための個々の事象に応じたプロジェクトを行います。これにより、例えば船主は自社の船隊の環境パフォーマンスを評価し、特定の船舶に新技術を導入した際の排出量、安全性、および運航への影響をモデル化することができます。このアプローチの最近の例として、⼀般財団法⼈⽇本海事協会および船主の丸紅株式会社との共同研究があり、NAPAの船舶性能モデルと運航シミュレーションツールを使用して、運航最適化が実際の船隊のGHG排出量とCII格付けに与える影響を測定しました。この研究では、7.3%の削減が可能であることが判明しており、これは船舶がさらに2〜3年間CIIの格付けを維持するのに十分な数値でした。

海運の脱炭素化に特効薬はありませんが、NAPA Studiosは公平な専門知識と検証された見識を提供し、各組織の持続可能性戦略に適したアプローチを描く支援をします。

私たちのビジョンは、今後予想される大規模変革のあらゆる局面において、データに基づく根拠と実証済みのソリューションを求める海運業界の需要の高まりに応えることで、業界全体の成功に貢献することです。何十年もの間、ダンスフロアを沸かせた名曲の数々が、創造性とコラボレーションによって生み出されてきたように、私たちは、この先の変革のリズムを作る新しい技術とビジネス、そして安全の進化を生み出そうと努力しています。

 

Maritime Journalにて、水谷直樹のブログに基づいた編集記事が2024年4月に初めて公開されました。

Never miss a story

We will keep you updated on NAPA’s insights related to the topics of your interest.

次の記事