Tag: Design process
Vard Marine社 – 複雑さを克服し革新的な船舶を設計
「オーダーメイド」を合言葉とするVard Marine社は、造船および海洋エンジニアリング会社であり、船主のニーズに合わせた非常に特殊な船舶の建造を強みとしています。しかし、毎回斬新なコンセプトを提案することは並大抵のことではありません。同社の設計者は、反復作業を効率的に管理し、コンセプトの実現可能性を早期に評価するための適切なツールを必要としています。そのために同社にはNAPAという味方がいます。 カナダ、米国、ベトナム、ポーランドに事務所を構えるVard Marine社は、砕氷船、オフショア船、再生可能エネルギーを使用する船、フェリー、調査船、パトロール船、代替燃料バンカー船など、主に特殊船を中心に事業を展開しています。コンセプトから基本設計に特化する一方で、詳細設計や生産設計では造船会社との共同作業も定期的に行っています。 Vard Marine社の目指すところは、顧客のニーズに合わせた特殊船舶の設計会社として選ばれることです。これを達成するため、Vard Marine社のチームはカスタマイズを新たな高みへと引き上げ、船主独自のニーズや運航に合わせて各設計を慎重に最適化しています。Vard Marine社のNAPAの主要ユーザでありproject naval architect であるDenley Rumbolt氏は、「私たちは、お客様が必要とする船だけでなく、私たちが提供できる最高の船をお届けしたいと考えています。」と語っています。 このビジョンを実現するためには、設計プロセスそのものを革新する必要がありました。「以前は、船舶設計の特定の分野における進捗は、当社の設計ツールの一部によって制限されていました。」とRumbolt氏は述べています。その代わりに同社は、技術者が斬新な設計では避けられない何度も繰り返される反復をより柔軟に管理し、プロセスの初期段階でコンセプトの実現可能性を検証できるツールを必要としていました。2019年に登場したNAPAの船舶設計ツールは、この両面でのワークフローの変革に役立ちました。 デザインツールとしての復原性の活用 Vard Marine社が斬新なオーダーメイドの設計を生み出す能力の要となっているのは、NAPAの復原性計算を、設計プロセスのさまざまな段階で規則を満足する確認を行うためだけでなく、初期段階から船舶設計に情報を提供するツールとして活用していることです。 Vard Marine社では、技術的に可能な限り早い段階で復原性を評価してきましたが、以前はソフトウェアの制限により、船舶の設計プロセスで変更が発生した際に、規則を満足する確認を行うために復原性をチェックするだけにとどまっていました。 「特に白紙状態からの全く新しい設計の場合、復原性を規則の満足の確認に限定するのではなく、設計プロセスに情報を与えるツールとして活用したいという要望がありました。NAPAはこの設計哲学を後押しします。」– Vard Marine社、project naval architect Denley Rumbolt氏 NAPAのツールがこの課題を解決しました。Vard Marine社は初期段階から復原性計算を行い、設計ツールとして活用することができます。実際には、ラフな船型が出来上がるとすぐにNAPAソフトウェアに入力し、各区画の「境界」を設定します。言い換えれば、復原性チームは、最終的に船が復原性を満足することを確実にするために、許容できる重量、船の幅、長さ、重心のばらつきを許容できる「範囲」を決定することができます。この許容範囲は、艤装、配置、重量見積りチームなど、他の部門に伝えられ、彼らが自信を持って作業し、技術革新できる明確な境界線が与えられます。 知識は力なり これは画期的なことでした。NAPAを使うことで、船舶の復原性に影響を与えることなく、保護されていない開口部を追加できる場所の明確なイメージを迅速かつ簡単に作成できるため、艤装チームはタンク通風口、配管、HVACの位置決め作業を早期に開始できます。「このアイデアは非常に受け入れられました。なぜなら、それは彼らが自由に作業できる範囲を示してくれるからです。そして、もしその範囲を満たせない場合は、問題となる箇所を特定し、解決策を見つけることができます」 と、Rumbolt氏は付け加えました。 復原性を設計ツールとして使用することは、もうひとつ重要な利点があります。たとえば、最近の設計作業では、配置と流力性能チームが、エンジンと補機のサイズを小さくするために、船の幅をわずかに小さくできるかどうかを知る必要がありました。船主にとってこの差は、船舶の寿命を通じての投資コストと燃料節約という点で非常に大きなものです。 「NAPAを設計ツールとして使用することで、NAPAを使用する以前には簡単にはできなかった情報を設計チームの他のメンバーに提供することができます。プロセスの早い段階で制限を簡単に調べることができるため、潜在的な問題に先手を打つことができ、特に設計が流動的なコンセプト段階でのやり直し作業を大幅に減らすことができます。もちろん、そのおかげで私たちはより効率的になりました。」とRumbolt氏は強調しました。 設計の繰り返しを管理 革新のためのもうひとつの前提条件は、斬新なコンセプトでは避けられない何度も発生する反復作業を管理する能力です。そこではNAPAのパラメトリック設計機能が活躍します。プロセスの最初からパラメトリックモデルを設定することで、チームは簡単にモデルを反復し、さまざまな設計オプションを検証することができます。簡単に言えば、1つのパラメーターを変更すると、他の形状が自動的に適応されます。これは船の主な特性や船体形状だけでなく、より詳細なレベルでは、内部の配置にも使用することができます。 これは、米国の洋上風力発電市場向けのコンセプトの成功に役立ちました。これにより、Vard Marine社の設計者は、復原性基準を確実に満たしながら最大限の耐航性を確保するための最適なメタセンター高(GM)を決定するために、競合する変数間の適切なバランスを見つけることができました。各チームは細分化された配置を何度も試行することで、規格に適合するだけでなく、顧客のニーズを満たす最大限の操作性を備えた船舶を作り上げることができました。 持続的な革新 このような効率的で俊敏な設計プロセスは、Vard Marine社が、今後のめまぐるしい技術革新の時代に向けて確かな基盤の構築に役立っています。すでに海運業界にとって中核的な検討事項となっている脱炭素化は今後ますます重要性を増し、船舶の動力源として新たなエネルギー源が求められています。 このことは、設計者に新たな複雑さと課題をもたらし、革新能力が鍵となります。新燃料は化石燃料に比べてエネルギー密度が低いため、流力性能や船型設計を改善し、船舶のエネルギー効率を高めることができれば、今後大きな強みとなるでしょう、とRumbolt氏は述べています。 Vard Marine社は革新のための強固な土台を築いたという自信と共に、この未来を迎えようとしています。NAPAのツールを携えることで、彼らのチームは複雑さを管理し、急速に進化する業界のために斬新な船舶を創造するという、彼らが最も得意とすることに集中することができるのです。
Read Article11月 21, 2024
【ウェビナー録画配信】第二世代非損傷時復原性基準について
Jaakko Rahola氏がフィンランドの船舶のための最初の非損傷時復原性基準を定義、提案して以来80年以上が経ちますが、ISコードが非損傷時復原性基準を国際レベルで義務化したのは2008年のことでした。これらの要件は、船舶の復原性を確保するための強固な基礎を定める一方で、実海域で起こり得る複雑な現象を前提としておりません。 そのため、船舶がさらに高いレベルの安全性で航行できるように第二世代の基準を迎える時が来ています。 第二世代非損傷時復原性基準とはどのようなものでしょう? 第二世代の非損傷時復原性基準は、既存の基準を置き換えるものではありません。単純に、それは併用するための追加のガイドラインセットです。これは、波浪中の復原性、航行中の復原性、航行不能時の復原性、過大な復原性による危険性といった4つの主な危険現象を対象としております。 従来の復原性基準に合致しているかどうかの評価方法とは異なり、新しい基準は評価レベルを導入し、より繊細な評価プロセスを提供します。よりシンプルなチェックポイントから始まり、徐々に複雑さを増していくこれらの新しい評価基準は、船の復原性を徹底的に調べるものです。パラメトリックロールの共振現象や、波に「サーフ・ライド」する際に直面する危険は、船舶が洋上で直面しうる環境の多面的な性質を反映するために、現在評価で考慮されている事例の一部に過ぎません。 第二世代の基準は現在、義務ではなく試行段階にありますが、海事産業の安全基準を向上させるための重要な一歩です。これらの新しい基準に関するフィードバックは、ガイドラインの最終化の前にさらに改善する上で非常に価値があるため、国際海事機関(IMO)は、すべてのステークホルダーからの積極的な参加と意見を歓迎しています。 これらのガイドラインが今後数年間で標準になる可能性があることを考えると、変更に先んじて基準に慣れるために時間をかけることは非常に価値があります。 私たちの最新のウェビナーをご覧ください。そこでは、リードテクニカルコンサルタントのDaniel Lindrothが、その背景から様々な危険現象、およびこれらの新しい基準の使用における信頼性の築き方を詳しく説明しています。 ご視聴をご希望の方は、以下フォームにご入力ください。入力頂いたメールアドレス宛にパスワードをお送りします。
Read Article6月 25, 2024
Bluetech Finland: 3Dモデル活用による船舶設計の効率化
船舶設計・エンジニアリング会社であるBluetech Finland社は、絶えず変化する船舶設計の要求に迅速に対応し、顧客に高品質な成果を確実に提供することが強みです。同社の創業以来、復原性計算や高度な3Dモデルを用いた詳細設計機能を含むNAPAの設計ソリューションは、日々の業務において不可欠なツールとなっています。これらのツールは、プロジェクト全体にわたる効率、スピード、そして顧客満足度を達成する上で重要な役割を果たし、Bluetech社とNAPAを船舶技術の未来を形作るパートナーとして位置づけています。 ヘルシンキに拠点を置く, Bluetech Finland社は、海事エンジニアリングの最前線に立ち、幅広い船舶設計サービスを提供しています。80人の専門家からなるチームは、クルーズ船、RoPax、貨物船、脱炭素化改修を含む様々なタイプの船舶に特化しており、コンセプトから詳細設計に至るまでの設計フェーズをカバーしています。世界をリードする造船所と協力し、Bluetech Finland社は海事産業に多様なソリューションを提供しています。 柔軟性、それは設計プロセスにおける必須要素 船舶の設計は繰り返し作業の連続です。船舶設計プロセスには、継続的な一連の修正が含まれ、建造のための船舶設計を最終決定するまでに、頻繁な修正と微調整が不可欠です。 顧客の要件を満たすために変更を加え、更新後の設計を分析することは、船舶設計分野では一般的なことです。 – Bluetech Finland社 Head of Hull Basic DesignのMikko Hakulinen氏 特に初期の船舶設計フェーズでは、船舶の最終3Dモデルの迅速な開発により、設計プロセスにおける速度と適応性を実現するために、有限要素(FE)モデルの作成と更新が重要です。Hakulinen氏は、「NAPAのソリューションは、効率と柔軟性を通じて私たちの船舶設計プロセスを強化し、迅速な変更と3Dモデルの初期作成を可能にし、設計ワークフローを合理化する上で重要です。」と強調しています。 加えて、船舶設計プロセスに関わる全ての関係者とのタイムリーでオープンなコミュニケーションを確保することが重要です。設計変更に関する最新情報の迅速な共有や議論が常に求められているためです。NAPAは、単一の3Dモデルを通じて迅速かつ効率的な設計変更を促進することで、このプロセスを著しく改善し、設計作業プロセス全体のコミュニケーションを向上させています。 すべての関係者のための船舶設計プロセスの合理化 特に、最近のTT-line Spirit of Tasmaniaフェリープロジェクトでは、Bluetech Finland社が船体構造設計の技術的詳細フェーズで重要な役割を果たしました。Bluetech Finland社はプロジェクトの初期段階でNAPA Steelを使用して構造3Dモデルを開発し、一貫したデータ管理を実現しました。NAPA 3Dモデルは中心的な参照ポイントとして機能し、プロジェクトに関与するすべての専門分野との協力を可能にし、船の設計と建設プロセスを効率化しました。 技術設計から生産設計への移行は、通常、技術的な問題や設計スケジュールによる大きな課題を伴います。技術的な理由には、技術設計の遅延変更が含まれます。例えば、生産設計への遅延変更の組み込みや有限要素解析(FEA)の遅延変更などがあり、リソースとタイミングの課題を引き起こします。NAPA Steelは、迅速かつ大幅な変更と生産設計との効率的な連携を可能にすることで、この課題に対処します。 NAPA Steelモデルを製造設計モデルにシームレスに統合することで、設計スケジュールの課題が軽減されます。機能モデルを迅速に建造モデルに移行することは、大きな利点をもたらします。モデルが建造環境でアクセス可能であり、関連するすべての設計部門に対して可視化されている場合、詳細設計作業の開始が驚くほど加速します。通常、これらのスケジュールに関する課題に対処する方法は、組織が理想的なタイミングよりも少し早く詳細設計を開始することですが、設計の後期で大幅な変更があった場合に大きなリスクが伴います。また、この早期開始は、時間のかかる従来の設計移行プロセスとともにデータの損失を引き起こす可能性もあります。 NAPAは他のCADソフトウェアとの互換性を持ち、船の設計プロセス全体で単一のNAPA 3Dモデルを使用できるため、大きなメリットをもたらします。これにより、同じモデル内で複数の設計バリエーションをテストし、頻繁なFEM解析を含む繰り返し作業を迅速に行うことができます。 「このアプローチは、詳細設計への移行を効率化するだけでなく、設計品質を向上させ、情報管理の一貫性を確保します。」 とBluetech Finland社のProject Manager、Mikko Takala氏は話しています。 世界最大のクルーズ船である「Icon of the Seas」の設計中、NAPAの3Dモデルは、設計の正確さを向上させる重要な役割を果たしました。Bluetech Finland社はMeyer Turku造船所をサポートし、NAPA Steelを使用して船の基本構造を開発しました。クライアントのニーズに応えるため、Bluetech Finland社はNAPAのツールを活用し、一連のモデル更新に伴う技術的用途とコストへの影響を評価しました。NAPAの設計ソリューションは、効率的なプロジェクト管理のために重要な情報提供を行う役割を果たしました。 「NAPA設計ソリューションの主な利点の1つは「リスティング」です。船の設計と3Dモデリングにはさまざまなソフトウェアオプションが存在しますが、NAPAは、最終的な納品に至るまで、必要不可欠なレポートや 書類の作成など、設計開発を数字で報告する上でその有効性が際立っています。」 と、Bluetech Finland社のDirector, Administration であるAntti Metsä氏は述べています。Metsä氏はNAPAソフトウェアを36年以上のNAPAソフトウェアの使用経験という豊富な経歴を持ち、その深い専門知識を示しています。 明日のニーズに応えるソリューションの強化 環境課題が激化する中で、海事セクターは持続可能性とネットゼロの目標に向けて進んでおり、将来の船舶設計は大きく異なるものになるでしょう。Takala氏は、「最も適応性のある効率的な設計ツールを使用することは、未来の船のユニークな設計特性に対応するために避けられないことです。風力補助推進、代替燃料、エネルギー効率の改善など、新しい船舶技術は、特定の重量、体積、形状の考慮を必要とします。私たちは各船のタイプに完璧に合った設計を提供し、最高のパフォーマンスと環境に優しい基準を満たすことを目指しています。」と説明しています。Bluetech […]
Read Article4月 15, 2024
構造強度解析時間を30%削減 NKやNSYら、CSR適用船の自動評価システム開発
日本・東京ー2024年4月2日 ー 海事プレス(ニュース ー 造船・船用)にて、日本海事協会(NK)と日本シップヤード(NSY)、NAPAグループが共同で、共通構造規則(CSR)適用船の構造強度解析の自動評価システムを開発したことについて掲載されました。ぜひご覧ください。 日本海事協会(NK)と日本シップヤード(NSY)、NAPAグループは共同で、共通構造規則(CSR)適用船の構造強度解析の自動評価システムを開発した。新造船設計のリードタイム削減に重要な工程である構造共同解析の一部自動化を図ったもので、解析時間が30%削減される見込みだ。今後は解析時間の50%削減を目指して3社共同で取り組む。 NKが1日、発表した。造船会社の基本設計では構造設計がクリティカルパスとなることが多く、構造設計のリードタイム短縮が重要課題になっている。特に、構造強度解析の工程では、設計者が解析結果を見ながら強度要求基準を満足するまで計算を繰り返す必要がある。このため、多くの解析プロセスが要求されるCSR適用船では、設計期間が長期化する傾向にある。 そこで3社は、設計者が3次元(3D)CADを用いて設計をしている最中に、自動で構造強度の解析・評価が実施され、解析結果(補強要領)が反映されるシステムの構築を目指して研究を進めてきた。今回共同開発した自動評価システムは、NSYが形式知化した解析プロセスのノウハウを、NKの船体構造設計支援システム「PrimeShip-HULL」に組み込んだ。これにより解析時間の大幅短縮を図った。 さらに、3DCADをベースとした構造強度解析の全プロセスの自動化と、3Dモデルをベースとした船級承認を実現するため、「PrimeShip-HULL」とNAPAシステムとの連携も強化した。同システムの国内ユーザー向けに提供する。 いずれも国土交通省の「革新的造船工程高度化補助事業」の一環として実施した。 *海事プレスから転載の許可を得ています。 海事プレス プレスリリース:https://www.kaijipress.com/news/shipbuilding/2024/04/183102/ PDF:構造強度解析時間を30%削減 NKやNSYら、CSR適用船の自動評価システム開発_ 造船・舶用 _ ニュース _ 海事プレスONLINE 海事プレスURL :https://www.kaijipress.com/
Read Article4月 2, 2024
世界初の3D図面承認、NKが完了 日本郵船が自前で基本設計、「造船所との共創模索」
日本・東京ー2024年3月29日 ー 海事プレス(ニュース ー 造船・船用)にて、日本郵船がNAPA Steelで作成した3Dモデルを元に、日本海事協会が2次元図面なしで基本設計の承認を完了したことについて掲載されました。ぜひご覧ください。 日本郵船は28日、日本海事協会(NK)から新造多目的コンテナ船の基本設計で3D(3次元)モデルをもとにした図面認証を取得したと発表した。現在は平面(2次元)の設計図面で行われている新造船の船級承認を3D設計モデルで行う試みは各国で研究などが進んでいるが、外航の新造船で世界初。さらに、通常は造船所が行う新造船の基本設計を今回は日本郵船が自前で行った点が特徴で、「造船所の設計負荷が増加している中、これまで造船所に手渡していた部分も海運会社が並走し、造船所との新たな『共創』の在り方を探った」(中村利執行役員)。日本の海事産業の活性化を目的に、設計プロセスの効率化の核となる構造設計の3D化に先鞭をつけるとともに、造船所の設計負荷低減のための新たな新造船プロジェクトの在り方も模索した格好だ。 新造船の図面承認の3次元化は、近年の造船デジタル化での重要テーマの1つになっている。従来の二次元の図面は、船舶の複雑な構造を平面上に表現しているため、正確に読み取るためには長年の経験と高度な専門知識が必要。これに対して3Dのモデルであれば、設計担当者や海運会社など関係者が直感的に理解できるため、3D設計が徐々に普及しつつある。だが、3DCADシステムが会社や船種によって異なるため、船級協会に承認を申請する際には共通フォーマットの2次元図面にいったん変換する必要があり、さらに船級協会も受け取った2次元図面を3Dモデルに置き換えて評価システムで確認する必要があるなど、データ入力とモデル修正で双方に時間とコストが発生することが課題だった。このため各船級協会や造船所、海運会社が、3Dモデルのままで図面承認を行う検討を進めており、NKもこれまで日本郵船や国内造船所と協力して検討を進めていた。 今回は日本郵船が、船舶構造設計ツール「NAPA Steel」を用いて作成したコンテナ船の3D設計モデルのデータを、NKが船体構造設計支援システム「PrimeShip-HULL」上の連携システムを活用して、2次元図面に変換せずに基本設計段階の全ての図面承認を完了した。基本設計から船級承認まで3D図面で完了したのは外航船では世界初。「3Dと2Dが混在している現在の承認プロセスが、設計から承認に至るまで1つの3Dモデルで行えるようになることで、後戻りやミスもなくなり、品質向上や工数削減にも貢献できる」(NKの松永昌樹技術本部長)。NKとしては3Dによる図面承認の体制を整え、今後は造船所の利用の要望に応えていく方針だ。 また今回は、日本郵船が新造船のコンセプト開発だけでなく、造船所の所掌範囲である基本設計の段階まで実施したことが大きな特徴となる。背景には、船舶燃料の転換や船舶のニーズ多様化により、海運会社が多様な船を検討する必要性がある一方、造船所の設計負荷が増加していることがある。「造船所との『共創』の可能性を模索する必要性を感じており、例えば造船所の状況に応じて新規事業のフィージビリティスタディ段階のコンセプト開発程度は船社が自前で行うなど、造船所と柔軟に『双方よし』の関係を築く手段になるのではと考えている」(中村執行役員)。今回は、造船所と設計引き継ぎのポイントとして、「どこまで進めるのが心地よいかを検証する」ために、自前で基本設計まで実施した。 図面承認の対象となったのは、東アジアと南太平洋の島しょ国の間を航行する2万2000総トン型の多目的コンテナ船「アイランダー船」。船体後方にカーデッキ、前方にコンテナ用ホールドを配置した特殊船型で、就航中の4隻のうち2隻が船齢20年を超えており代替建造を検討している。今回の設計をもとに、国内造船所と具体的な新造船商談を進めている。 3D設計への転換は、海事産業のDXで中心的なテーマだ。「3Dモデルには2次元図面より多くの情報が含まれ、より詳細でスムーズなコミュニケーションが可能。早い段階から造船所の3D設計にわれわれ船社が関与することで、設計工数が低減できる可能性がある」(山本泰工務グループ長)。設計の初期段階から3Dモデルを活用してより多くの情報を作り込むフロントローディング手法への展開や、東京大学MODE講座が研究を進めるモデルベース開発の手法、就航後の船舶での運航支援や保守への適用など、日本郵船も船舶のライフサイクルでの3Dモデルの活用策を検討する。 *海事プレスから転載の許可を得ています。 海事プレス プレスリリース:https://www.kaijipress.com/news/shipbuilding/2024/03/183016/ PDF:世界初の3D図面承認、NKが完了日本郵船が自前で基本設計、「造船所との共創模索」 _ 造船・舶用 _ ニュース _ 海事プレスONLINE 海事プレスURL :https://www.kaijipress.com/
Read Article3月 29, 2024
効率を追求:VARDが10週間で実現した3D船舶設計
VARD Design & Engineering社のチームは大きな課題に直面しました:彼らは典型的な構造設計時間を3分の1に削減し、契約締結から船級承認 までを10週間で終えることができるでしょうか? NAPAの3Dベースのツールを駆使して、賢く、創造的に、そして協調的に働くことで彼らはこの難局を打開しました。彼らがどの様に速度と精度を両立させて大成功に導いたかをここで紹介します。 造船業界は変化の最中にあります。よりクリーンで安全であることを求める規則強化により、船舶の設計はしばしば急進的な革新を強いられます。納期も短縮され、その結果、設計者はより多くのことをより少ない時間で行わなければならなくなっています。 この様な状況により、伝統的な直線的な設計プロセスでは対応が難しくなり、より早い段階で設計を確定させることが必要になっています。そして、デジタル3D環境上のモデルという「信頼できる唯一の情報源」にアクセスでき、様々な分野の検討を同時に行うことを可能にする新世代の設計ツールが要求されるようになりました。 NAPAは、構造設計を含む一連のツールを先駆的に業界に提供してきました。これらのツールがどのように構造設計プロセスを変革し、加速させることができるかは、 VARD Design & Engineering社のチームが10週間で船級承認までを完遂させた事例によって示されます。これは通常のプロセスから4週間から6週間も短い期間です。 分散型および協調型エンジニアリング VARD社は難局を好機に変えました。同社は、オフショア再生可能エネルギー分野向けに4 19シリーズの設計をベースにした風力推進船を提供するビジネスチャンスがありました。しかし、同社の造船所の建造スロットで利用可能なものは、船級承認までを完遂させるための時間を考えると理想的とは言えませんでした。同スロットで建造するためには、通常の14-16週間から10週間に設計期間を短縮する必要があったのです。この様な期間短縮を実現するためには、設計チームと船級協会の双方の創造的な思考と協力が必要で、このようなニーズが協調型の効率的なプロセスを実現する不可欠な基盤になりました。 VARD社の主要なエンジニアリングオフィスはノルウェーのÅlesundにあり、11カ国に合計22の拠点を持っています。拠点と専門部門が地理的に広範に分散しているため、VARD社は分散エンジニアリングモデルを運用し、特に時間的制約が厳しい場合には機敏に対応できるようにしています。例えば、10週間で風力推進船を提供するために、クロアチアの設計オフィスのエンジニアがÅlesundに飛んで一連のタスクを完了させるのと並行して、ルーマニアのTulceaのエンジニアリングオフィスのスタッフがモデリング作業を行いました。 デジタルツールの中心的役割 NAPAの構造設計ソリューションは、初期段階から、事前調整に必要な構造細部を含む3Dモデルを容易に作成できます。機械部門と配管部門の担当者は並行して作業を行うことができ、必要に応じて船の構造は随時変更されます。 「私たちはNAPAという3Dツールを用いることによって、船を大きな視点からでも詳細レベルからでも見ることができます。それにより、私たちはÅlesundにいながら状況をよく把握でき、現場の造船所で問題が発生する前に見つけることができます。」— Lina Austigard、VARD Design & Engineering社のシニアエンジニア Austigard氏は、時間のプレッシャーが高まる中で、詳細設計を早期に開始できることが重要な利点であると強調しています。 NAPAはその様な設計の早期開始を実現できます。2Dでは必ずしも捉えられない欠陥、例えば、整合性が取れていない箇所や、現実にはありえないような区画などを見つけることができます。 個別要望を把握する 船級承認の所要時間である典型的な14-16週間の場合でも、詳細な作業を行うために設計チームと造船所とのコミュニケーションは多く必要となります。実際の建造船の開発にはさらに多くの時間が必要で、姉妹船であっても大きな差異があることがあります。 同じ市場向けであっても、異なるクライアントからは異なる要求を受けることがあります。例えば、風力推進船は通常、大きなと少なくとも一つの大きなクレーンが装備されますが、クライアントごとにギャングウェイの種類、使用方法、クレーンや他の機器の数についてこだわりがあります。また、宿泊施設に関しても、何人が船上で生活し、どのような居住水準とするのか、という点でも異なる要件があるかもしれません。 「新しいタイプの燃料への対応を志向するクライアントがますます多くなっています。私たちは、将来的に新しい燃料への改装を可能とする“新燃料対応準備済み”船を建造しています。」とAustigard氏は言います。 NAPAとのパートナーシップ NAPAチームとの密接な関係も、重要な成功要因の一つです。特に、NAPA Steelの導入後の最初の数ヶ月間には、トレーニングビデオやスクリプトの提供を含む適切なタイミングのサポートのおかげで、VARD社は課題を解決するために必要なスキルと自信を早期に得ることができました。新設計の品質と性能を保証する必要がある中、NAPAとのこのような関係が時間短縮の取り組み強化の中心的な役割を果たしています。
Read Article2月 28, 2024
SDARI、BV、NAPAの共同プロジェクトが3Dモデルベース船級承認の利点を検証
2023年11月20日:世界的な試験、検査、認証のリーダーであるBureau Veritas(BV)、上海船舶設計研究院(SDARI)、そして海事ソフトウェアおよびデータサービスのグローバルプロバイダーであるNAPAは、3Dモデルによる船級承認を可能にする共同開発プロジェクト(JDP)の第一段階を完了しました。 プロジェクトでは、設計者が提供した3Dモデルを直接利用し、複数の変換を必要とする従来の2D図面に基づく従来の船級レビューではなく、3Dモデルに基づく承認(3D MBA)の実現可能性が確認されました。この取組みの目的は、設計プロセスの効率を向上させ、時間とコストを節約すると同時に、造船所、船舶設計者やエンジニア、船主、そして船級協会など、設計に関わるすべての関係者間の精度とコミュニケーションを向上させることです。
Read Article11月 22, 2023
中国船級協会とNAPA、3D船舶設計承認プロセスの合理化を図る新しい共同インターフェースを導入
NAPA Steelと中国船級協会のCOMPASS-SDPとの間のインターフェースを確立するプロジェクトにより、データの相互運用性を高め、規則計算の容易化、時間短縮、より緊密な協力関係を実現します。 本件に関するお問合せ先:
Read Article6月 16, 2023
目前に迫る設計の未来:3Dモデルベース承認をコンセプトから現実へ
造船所、設計者、船級協会の誰もが、3Dモデルベース承認(3D MBA)は、複雑化する環境下で効率を高め、脱炭素化移行に向けた課題に取り組む造船所の未来に不可欠な要素であると認識しています。もはや遠い将来の話ではなく、世界中のさまざまな造船所や船級協会が、今日すでに3D MBAの実現に取り組んでいます。この画期的なプロセス実現のために、NAPAがどのように業界のパイオニアと取り組んでいるかについてご紹介します。 新たな挑戦は、新たな働き方を求めています。脱炭素化、海上安全に関する規制強化、船舶の自律運航の台頭、時間の制約など、あらゆる側面から変化がもたらされ、複雑さを増しています。 3D MBAの目的は、簡単に言えば、船舶の設計に使用した3Dモデルで船級規則の確認や計算を可能にすることです。これは、造船所は船級承認のために3Dモデルを2D図面に変換し、変更を適用するために再び3Dに戻す必要がある現在の標準的なプロセスからの大きな改善点です。2Dと3Dの間で何度も変換する必要がないため、時間の節約になるとともに、エラーの発生も防ぐことができます。 さらに、現在の標準的なプロセスでは、造船所の技術者が3Dモデルを変換して関連情報を抽出し、規則計算やFEM解析に使用するプラットフォームが要求するフォーマットへの入力が必要です。これには多くの手入力や微調整が必要となり、大変時間がかかります。すなわち、3Dモデルをシームレスに変換し、船級協会が提供するエンジニアリングツールでの使用を可能にすることも、3DMBAの重要な要素となっています。 このコンセプトをどのように現実のものにするか。主要な船級協会では、3D MBAの実現に向けて、その戦略や顧客のニーズに応じたさまざまなアプローチをとっています。大きく分けて2つの道が考えられます: Application Programming Interface (API)は、船級協会がNAPA APIを通じて3Dモデルに直接アクセスし、そこで規則の確認や計算を行うために必要な情報を取得するものです。韓国船級協会(KR)や日本海事協会(ClassNK)が採用しているこの方式では、造船所と船級協会が3Dモデル上で直接情報や計算結果を交換することができるため、3Dモデルが船舶設計に関するあらゆる情報が蓄積される「信頼できる唯一の情報源」となります。 Open Class Exchange (OCX) は、3D MBAの業界標準ファイルフォーマットとして開発されました。造船所が設計に使用するソフトウェアと、船級協会が規則の確認や承認に使用するプラットフォームの橋渡しをするものです。NAPA Designerで生成されるOCXフォーマットは、3Dモデルからすべての関連情報を抽出し、船級協会のソフトウェアが読み取れるようなフォーマットに変換します。これは、Bureau Veritas(BV)とDNVが採用しているアプローチで、他の主要な船級協会もOCXコンソーシアムに参加しています。 Bureau Veritas(BV)とDamen Engineering – 最初の3Dマイルストーン通過 今年初めに、2,500 m3の浚渫船がDamenの船舶として初めて3Dモデルによる設計、審査、クラス承認を受けました。これはNAPAとBVとの1年にわたる協業の成果です。この技術的な飛躍は、OCX標準ファイル形式を使用して達成され、BVは社内ツールであるMARSとVeriSTAR Hullを使用して規則の確認と計算ができました。その結果、2次元図面に変換することなく、同じファイルフォーマットでシームレスに納品まで完了できました。 この新しいプロセスは、素晴らしいスタートを切りました。最初の船舶設計から、3D MBAはその約束を果たし、Damenのチームは、船級承認のためにコンセプトを2D図面に変換し、変更を適用のために再度3Dに変換する必要がなくなったため、貴重な時間を節約できるようになりました。船級協会と造船所間のコミュニケーションが目に見えて容易になり、設計審査もより効率的かつ確実に、またエラーのリスクも減少しました。 重要なのは、3D MBAが安全性を損なうことなく船級承認プロセスを合理化したことです。これは、すべての基準や規則を満たしていることを確認するために、同じように厳格なチェックが行われたからです。この最初のプロジェクトの結果は非常に重要で、Damenはすでに1000m3と4000m3の2隻のホッパー浚渫船を含む、さらなる設計にこのプロセスを適用しています。 ClassNKと日本シップヤード – 「信頼できる唯一の情報源」の開発 もう一つの方法であるNAPAのAPI(Application Programming Interface)は、ClassNKと日本シップヤードがシームレスな統合を実現するために使用され、3Dモデルは設計やレビューの過程で常に最新に保たれた船舶情報の中心的存在として維持されました。 本プロジェクトでは、船級承認プロセスの効率化と3D MBAに関連する実用的な問題を解決するためのツールやプロセスの開発に焦点を当てました。船体構造設計を最初のターゲットとして、NAPA DesignerとClassNKの構造強度計算プラットフォームPrimeShip-HULL(PSH)との統合システムを開発し、規定規則計算や有限要素(FE)解析に対応しました。 プロジェクトでは、バルクキャリアとオイルタンカーのサンプルモデルで試験を行い、新しい統合システムの有効性が立証されました。具体的には、作業の重複をなくし、構造図と構造モデルの設計情報の一貫性を確保する点で大きなメリットがあることが確認できました。 また、NAPA 3Dモデル所有者が、すべての関係者に安全かつ簡単にモデルのレビューやコメントの共有を可能にするWebベースのアプリケーション、NAPA Viewerの有効性立証も、このプロジェクトの重要な成果です。NAPA Viewerは情報の中枢として機能し、3D MBAを実現するだけでなく、船舶設計に関わるすべての関係者間の情報共有やコラボレーションをより良くサポートします。また、3Dモデルの利点と従来の2D図面の利点を組み合わせた自動アノテーションツールにより、確認を行う際に設計情報を迅速かつ直感的に発見できるため、新しいプラットフォームは現在の2Dベースのプロセスと同等かそれ以上の効率を実現可能なことが、試験により立証されました。 Korean Register […]
Read Article5月 15, 2023