Tag: Intact Stability
Vard Marine社 – 複雑さを克服し革新的な船舶を設計
「オーダーメイド」を合言葉とするVard Marine社は、造船および海洋エンジニアリング会社であり、船主のニーズに合わせた非常に特殊な船舶の建造を強みとしています。しかし、毎回斬新なコンセプトを提案することは並大抵のことではありません。同社の設計者は、反復作業を効率的に管理し、コンセプトの実現可能性を早期に評価するための適切なツールを必要としています。そのために同社にはNAPAという味方がいます。 カナダ、米国、ベトナム、ポーランドに事務所を構えるVard Marine社は、砕氷船、オフショア船、再生可能エネルギーを使用する船、フェリー、調査船、パトロール船、代替燃料バンカー船など、主に特殊船を中心に事業を展開しています。コンセプトから基本設計に特化する一方で、詳細設計や生産設計では造船会社との共同作業も定期的に行っています。 Vard Marine社の目指すところは、顧客のニーズに合わせた特殊船舶の設計会社として選ばれることです。これを達成するため、Vard Marine社のチームはカスタマイズを新たな高みへと引き上げ、船主独自のニーズや運航に合わせて各設計を慎重に最適化しています。Vard Marine社のNAPAの主要ユーザでありproject naval architect であるDenley Rumbolt氏は、「私たちは、お客様が必要とする船だけでなく、私たちが提供できる最高の船をお届けしたいと考えています。」と語っています。 このビジョンを実現するためには、設計プロセスそのものを革新する必要がありました。「以前は、船舶設計の特定の分野における進捗は、当社の設計ツールの一部によって制限されていました。」とRumbolt氏は述べています。その代わりに同社は、技術者が斬新な設計では避けられない何度も繰り返される反復をより柔軟に管理し、プロセスの初期段階でコンセプトの実現可能性を検証できるツールを必要としていました。2019年に登場したNAPAの船舶設計ツールは、この両面でのワークフローの変革に役立ちました。 デザインツールとしての復原性の活用 Vard Marine社が斬新なオーダーメイドの設計を生み出す能力の要となっているのは、NAPAの復原性計算を、設計プロセスのさまざまな段階で規則を満足する確認を行うためだけでなく、初期段階から船舶設計に情報を提供するツールとして活用していることです。 Vard Marine社では、技術的に可能な限り早い段階で復原性を評価してきましたが、以前はソフトウェアの制限により、船舶の設計プロセスで変更が発生した際に、規則を満足する確認を行うために復原性をチェックするだけにとどまっていました。 「特に白紙状態からの全く新しい設計の場合、復原性を規則の満足の確認に限定するのではなく、設計プロセスに情報を与えるツールとして活用したいという要望がありました。NAPAはこの設計哲学を後押しします。」– Vard Marine社、project naval architect Denley Rumbolt氏 NAPAのツールがこの課題を解決しました。Vard Marine社は初期段階から復原性計算を行い、設計ツールとして活用することができます。実際には、ラフな船型が出来上がるとすぐにNAPAソフトウェアに入力し、各区画の「境界」を設定します。言い換えれば、復原性チームは、最終的に船が復原性を満足することを確実にするために、許容できる重量、船の幅、長さ、重心のばらつきを許容できる「範囲」を決定することができます。この許容範囲は、艤装、配置、重量見積りチームなど、他の部門に伝えられ、彼らが自信を持って作業し、技術革新できる明確な境界線が与えられます。 知識は力なり これは画期的なことでした。NAPAを使うことで、船舶の復原性に影響を与えることなく、保護されていない開口部を追加できる場所の明確なイメージを迅速かつ簡単に作成できるため、艤装チームはタンク通風口、配管、HVACの位置決め作業を早期に開始できます。「このアイデアは非常に受け入れられました。なぜなら、それは彼らが自由に作業できる範囲を示してくれるからです。そして、もしその範囲を満たせない場合は、問題となる箇所を特定し、解決策を見つけることができます」 と、Rumbolt氏は付け加えました。 復原性を設計ツールとして使用することは、もうひとつ重要な利点があります。たとえば、最近の設計作業では、配置と流力性能チームが、エンジンと補機のサイズを小さくするために、船の幅をわずかに小さくできるかどうかを知る必要がありました。船主にとってこの差は、船舶の寿命を通じての投資コストと燃料節約という点で非常に大きなものです。 「NAPAを設計ツールとして使用することで、NAPAを使用する以前には簡単にはできなかった情報を設計チームの他のメンバーに提供することができます。プロセスの早い段階で制限を簡単に調べることができるため、潜在的な問題に先手を打つことができ、特に設計が流動的なコンセプト段階でのやり直し作業を大幅に減らすことができます。もちろん、そのおかげで私たちはより効率的になりました。」とRumbolt氏は強調しました。 設計の繰り返しを管理 革新のためのもうひとつの前提条件は、斬新なコンセプトでは避けられない何度も発生する反復作業を管理する能力です。そこではNAPAのパラメトリック設計機能が活躍します。プロセスの最初からパラメトリックモデルを設定することで、チームは簡単にモデルを反復し、さまざまな設計オプションを検証することができます。簡単に言えば、1つのパラメーターを変更すると、他の形状が自動的に適応されます。これは船の主な特性や船体形状だけでなく、より詳細なレベルでは、内部の配置にも使用することができます。 これは、米国の洋上風力発電市場向けのコンセプトの成功に役立ちました。これにより、Vard Marine社の設計者は、復原性基準を確実に満たしながら最大限の耐航性を確保するための最適なメタセンター高(GM)を決定するために、競合する変数間の適切なバランスを見つけることができました。各チームは細分化された配置を何度も試行することで、規格に適合するだけでなく、顧客のニーズを満たす最大限の操作性を備えた船舶を作り上げることができました。 持続的な革新 このような効率的で俊敏な設計プロセスは、Vard Marine社が、今後のめまぐるしい技術革新の時代に向けて確かな基盤の構築に役立っています。すでに海運業界にとって中核的な検討事項となっている脱炭素化は今後ますます重要性を増し、船舶の動力源として新たなエネルギー源が求められています。 このことは、設計者に新たな複雑さと課題をもたらし、革新能力が鍵となります。新燃料は化石燃料に比べてエネルギー密度が低いため、流力性能や船型設計を改善し、船舶のエネルギー効率を高めることができれば、今後大きな強みとなるでしょう、とRumbolt氏は述べています。 Vard Marine社は革新のための強固な土台を築いたという自信と共に、この未来を迎えようとしています。NAPAのツールを携えることで、彼らのチームは複雑さを管理し、急速に進化する業界のために斬新な船舶を創造するという、彼らが最も得意とすることに集中することができるのです。
Read Article11月 21, 2024
【ウェビナー録画配信】第二世代非損傷時復原性基準について
Jaakko Rahola氏がフィンランドの船舶のための最初の非損傷時復原性基準を定義、提案して以来80年以上が経ちますが、ISコードが非損傷時復原性基準を国際レベルで義務化したのは2008年のことでした。これらの要件は、船舶の復原性を確保するための強固な基礎を定める一方で、実海域で起こり得る複雑な現象を前提としておりません。 そのため、船舶がさらに高いレベルの安全性で航行できるように第二世代の基準を迎える時が来ています。 第二世代非損傷時復原性基準とはどのようなものでしょう? 第二世代の非損傷時復原性基準は、既存の基準を置き換えるものではありません。単純に、それは併用するための追加のガイドラインセットです。これは、波浪中の復原性、航行中の復原性、航行不能時の復原性、過大な復原性による危険性といった4つの主な危険現象を対象としております。 従来の復原性基準に合致しているかどうかの評価方法とは異なり、新しい基準は評価レベルを導入し、より繊細な評価プロセスを提供します。よりシンプルなチェックポイントから始まり、徐々に複雑さを増していくこれらの新しい評価基準は、船の復原性を徹底的に調べるものです。パラメトリックロールの共振現象や、波に「サーフ・ライド」する際に直面する危険は、船舶が洋上で直面しうる環境の多面的な性質を反映するために、現在評価で考慮されている事例の一部に過ぎません。 第二世代の基準は現在、義務ではなく試行段階にありますが、海事産業の安全基準を向上させるための重要な一歩です。これらの新しい基準に関するフィードバックは、ガイドラインの最終化の前にさらに改善する上で非常に価値があるため、国際海事機関(IMO)は、すべてのステークホルダーからの積極的な参加と意見を歓迎しています。 これらのガイドラインが今後数年間で標準になる可能性があることを考えると、変更に先んじて基準に慣れるために時間をかけることは非常に価値があります。 私たちの最新のウェビナーをご覧ください。そこでは、リードテクニカルコンサルタントのDaniel Lindrothが、その背景から様々な危険現象、およびこれらの新しい基準の使用における信頼性の築き方を詳しく説明しています。 ご視聴をご希望の方は、以下フォームにご入力ください。入力頂いたメールアドレス宛にパスワードをお送りします。
Read Article6月 25, 2024