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船舶運航性能向上のための5つの行動
世界海洋フォーラムにおける最新の運航性能に関する目標宣言では、NAPAも署名者となり、海運業界が今すぐ行動を実施することで温室効果ガス(GHG)排出の実質的削減に向けた5つの主要な分野を明確に示しています。これは、私たちが考えを変え、すでに利用可能なテクノロジーを最大限に活用することで、脱炭素化において進展の多くが低リスクで高リターンと高インパクトで実現可能であることを強く示唆するものです。 この目標宣言の署名者たちから送られる最も強力なシグナルの一つは、海運の脱炭素化に対する即時行動の必要性であり、それはまさに手の届く範囲にあるということです。業界の規制当局、投資家、エンドユーザー、そして一般の社会も含め、すべてがこの十年に温室効果ガスの排出を大幅に削減することを求めています。重要な点は、削減のための解決策は「既に存在している」ということです。運航効率を最適化することで、年間の燃料コストを20%削減し、年間のCO2排出を200百万トン以上削減できる可能性があると、世界海洋フォーラム(GMF)が発表した一連の内部書簡で報告しています。 つまり、GHG排出量を削減することは、海運業界のみがすべきことではなく、船舶のビジネス上でも実行が可能でもあるということです。したがって効率性確保に向けた投資は当然の選択です。 しかし、まずどこから始めるべきか?という疑問が立ちはだかります。しかし、新たに出された目標宣言では、業界が今、運航性能を急速に向上させてGHG排出を削減するための5つの具体的焦点となる領域を示しています。今回の宣言に署名した30名は、これらの領域で一丸となって行動に移すことに合意しています。 ただ注視すべきことは、これらの行動の大部分は、新エンジンや代替燃料への高額な資本投資や複雑な規制変更などの努力が不要な、手間のかからないものだということです。GMFが示唆する行動とは、協力、より可視化されたリーダーシップの確立、そして新たな意識改革の必要性にスポットライトを当てています。また成功に向けて、新たな解決策、契約上の枠組み形成、そして働き方などを共同で受け入れる必要があります。 実際にどのように可視化するべきでしょうか?最新の運航性能に関する宣言で明らかにされた5つの行動の機会を、実際の例と共に詳しく見てみましょう。 1. データ収集と透明性 これらの宣言では、船舶と航海を最適化するためにデータをより多く活用し、革新的な技術の普及を支援するために必要とされる「透明性と信頼性」の確保を求めています。 具体的な例としては、Norsepowerと住友重機工業との最近の共同研究があります。この研究では、風力推進システムとNAPA Voyage Optimizationの相乗効果で、最大でGHG排出を28%削減出来るだけでなく、これらのソリューションへの投資ビジネスの機会を強化できることが明確になりました。 同じく、船上データの収集、統合、および分析を向上させる巨大な潜在能力がある別の分野があります。これにより、企業は燃料最適化の枠を超えて、日常業務とエネルギー使用の最適化へ向けて包括的に取り組み、業務を効率化することができます。NAPA Logbookを導入することで、規制の遵守とESG報告に向け、実際に船長が検証を行った信頼性できるデータソースを提供し、同時にGHG排出から廃棄物管理や海上安全などのあらゆる側面の最適化に、新たに取り組むことができるのです。(詳しくはこちらの英文記事をご覧ください。) 2. 契約変更 署名者たちは、「sail fast, then wait(速く航走し、沖待ちする)」の防止に取り組み、排出を指数関数的に増加させる「分割的インセンティブ」の問題に対処するための傭船契約をより近代化させようとしています。宣言は、運航性能における体系的な改善による利益を全てのステークホルダー、つまり船主、傭船者、また荷主、貨物受入業者が皆で共有できるように契約を再検討する重要な道筋となることを強調しています。 より顕著な例としては、NAPAがコーディネートするBlue Visbyソリューションがあります。このソリューションにより、革新的な契約上の枠組形成と最新のデジタル技術を組み合わせ、同じ港に向かう船団の到着を最適化し、(これまでに蓄積された)15万回の航海データを使用して、海運全体のCO2排出を約15%削減できると推定されています。NAPAの主要な優先課題は、この新しい枠組形成を実現するための技術プラットフォーム開発を支援し続けることなのです。 3. パイロットプロジェクト 宣言は、運航効率の施策の実用的な影響について業界が学ぶのを助けるパイロットプロジェクトの重要性を強調しています。パイロットプロジェクトは最善の方法を特定する機会であり、克服すべき障害も明らかにできるため、これらの実務的な知識は広く共有されるべきです。 業界全体では、バッテリー、風力推進、炭素捕捉システム、新しいエンジンや燃料など、さまざまな技術の実証が行われています。これらはかなり野心的な取り組みですが、決して飛躍的なものではないはずです。最新のデータ解析、デジタルツイン、モデリングツールを行える現代の業界の先駆けとなる取り組みにおいては、異なるオプションを仮想的にテストし、船舶の安全性、船舶性能、運航への影響をモデル化し、さらにパイロット運航による作業が始まる前に明確性と確実性を提供できます。 NAPAは、船舶の「デジタルツイン」を使用してこれを実現します。これは、船の設計に使用された3Dモデルで、その独自の構造と特性に関するデータを含んでいます。これにより、技術的実現可能性の側面、設計と復原性などを検証するだけでなく、燃料使用、航路選定、GHG排出などを含む運航への影響の完全な全体像を提供し、費用対効果のある方法で実行できます。 4. 港湾、ターミナル、バリューチェーン これは、サプライ・チェーン全体でより効率性を確保するために包括的なアプローチと協力が必要であることを強調しています。デジタル化、到着の順序付け、想定される到着と荷役完了通知の利用は、海上だけでなく船の旅の「最初と最後のマイル」での最適化を促進できます。 システム全体を最適化することは、船の燃料消費とGHG排出を減らす上で重要であり、最終的に供給チェーンをできるだけ効率的かつ環境に優しいものにすることができます。これは、脱炭素化の進展の基盤となるもう1つの分野です。 5. 文化とリーダーシップ これは、業務効率化のための行動において、大変重要な要素です。慣行と契約上の枠組みの変更を実施するためには、取締役会から船員まで、企業内のあらゆるレベルでの意識改革が必要です。宣言が強調するように、変革管理と教育は脱炭素化へ移行にとって必要不可欠です。実際に、海運業界における脱炭素化への取り組みの重要な促進要因は、包括的なトレーニングであり、技術だけでは不十分です。私たちは船員が新しいシステムを安全に操作するための正しい知識とスキルを持てるようにする必要があると考えます。NAPAは、海運業界向けの訓練機関と直接協力し、高度な技術開発に向け支援をしています。 例えば、私たちはRoyal Caribbean Group、CSMART、SIMWAVEと提携し、重要な安定性訓練をより身近で便利なものにしています。このトレーニングは、船上で講習とeラーニングコースで提供され、船員が今日の急速に進化する技術環境の中で必要な知識を得るための柔軟で便利な選択肢を提供します。 私たちは皆一緒です これらの行動分野はすべて、脱炭素化への道筋において海運業界でどれだけのことを達成できるかを示しており、海運業が自信を持って移行に乗り出すためのツールキットには多くの選択肢があることも示しています。しかし、その課題の多くは、創造的に思考し、既存の前提や枠組みを見直し、今ここでネット・ゼロを実際に事業として機能させるビジネスモデルを構築することです。 これはまた、持続可能性な航海における基本的な真理を思い起こさせるものでもあります。 業務効率化に関するGMF目標宣言の全文は、こちらをクリックしてください。
Read Article10月 30, 2023
NAPA、BlueVisby コンソーシアムへの日本政策投資銀行の加盟を歓迎 ~金融機関としては初の加盟~
ヘルシンキ(フィンランド)-海事ソフトウェアとデータサービスの開発におけるプロバイダーであるNAPAは、日本政策投資銀行が、Blue Visby主催のコンソーシアムに加わったことを歓迎する、と発表いたしました。Blue Visbyは、早く航走して沖待ちするという「Sail Fast,then Wait」(SFTW)の是正に取り組むことで、海運の温室効果ガス排出量を削減することを目的とした業界横断プロジェクトです。 Blue Visbyは、革新的な契約上の枠組みと最先端かつ透明性の高いデジタル技術を組み合わせることで、同じ港に向かう船団の到着時間を最適化し、船舶ビジネス上の優位性を失うことなく、航海速度の適正化と排出量の削減を可能にします。日本政策投資銀行は当コンソーシアムに参加することで、資金調達のノウハウやアドバイスを提供し、当システムの開発支援にあたります。 NAPAのデジタル技術に裏打ちされたBlue Visbyプラットフォームは、世界の船隊への導入に向け、技術面で急成長を遂げています。2023年8月、丸紅とBlue Visby社は、68隻のガス・ケミカルタンカーを対象に625の航海を検証した結果、平均15%のCO2削減効果があることがわかり、実際のプロトタイプ開発に進む合意に至りました。 一方、Blue Visbyコンソーシアムのメンバー数は、2022年7月にプロジェクトが正式に発足して以来、当初の13名から現在では31名と、2倍以上に増加しています。NAPAと法律事務所Stephenson Harwoodがコーディネートを行う当プロジェクトは、BIMCO、Baltic Exchange、UK Hydrographic Office、商船三井および丸紅、穀物輸出会社のCBH、英国のP&I保険会社のThomas Miller、Newcastle港、 New South Wales港湾局がすでに参加しており、また船級協会としては、日本海事協会やBureau Veritas、さらに環境団体や学術機関など、海事産業の主要な利害関係者まで幅広く参加しています。 NAPAのShipping Solutionsを担当する、 EVPである Pekka Pakkanenは、次のように述べています。「Blue Visbyがこの数ヶ月で大きく成長したことを大変誇りに思います。この革新的なソリューションをより多くの海運部門に提供するため、より多くのプロトタイプを含む次なるステップを楽しみにしています。また、加えて、 Blue Visbyの成功は、海運業界のさまざまなステークホルダーが積極的に協力し、脱炭素化への移行に伴うリスクと利益の一部を共有することに合意した場合に、海運業にとって何を達成できるかを具体的に示しています。また、こうした革新的な枠組みを実現するために、デジタル技術がより主軸を担う役割を果たすことも示すものです。脱炭素化の進展を阻む最大の非効率のひとつである “Sail fast then wait”(速く航走して、沖待ち) “の防止に取り組むことで、今日の海運業界の温室効果ガス排出量に大きな変化をもたらすことができます。」 本件に関するお問い合わせ先 :
Read Article10月 17, 2023
航路最適化で風力推進を次のレベルへ
NAPA、Norsepower、住友重機械マリンエンジニアリングの共同シミュレーション・プロジェクトは、風力推進装置と航路最適化システムを組み合わせることでどれだけCO2が削減できるかといった効果検証を行いました。これまでの結果は非常に素晴らしく、この技術によって平均28%の排気ガス削減が可能であることが確認されました。プロジェクトのフェーズ2では、より精緻なシュミレーションが可能になるだけでなく、船舶設計プロセスにおける運航データの利活用を促進し、よりスマートで環境に優しい船舶の設計プロセスの構築を目指しています。 本取組は、昨今の海運業界の脱炭素化の流れにさまざまな良い影響をもたらします。規制が厳格化され、新たなソリューションが市場に投入される中、海運業界全体が協力することでこうした変化にスムーズに対応することができ、船の設計から運航までのライフサイクル全体において、重要な意思決定を行うための、より信頼性の高い判断材料を提供することができました。 こうした先進的な取り組みを推進する姿勢は、Norsepower社と住友重機械マリンエンジニアリング社(以下、SHI-ME社)との共同研究の基盤となっています。風力推進と航路最適化を組み合わせることで、どの程度排出削減が達成できるのでしょうか?プロジェクトのフェーズ1では貴重な答えが得られました。フェーズ2では、同様に重要なトピックに目を向けています。 第1段階:より明確にするための協力 2022年12月から2023年3月にかけて実施された共同シミュレーション・プロジェクトのフェーズ1では、SHI-ME社のタンカーを対象に、Norsepower Rotor SailTMとNAPA Voyage Optimizationの組み合わせによる燃料消費量削減とCO2量削減の可能性を検証しました。 NAPAが開発したデジタル・ツインにより、Norsepower社およびSHI-ME社から提供された本船とローターセイルのスペック情報と2022年の海気象データを用いて、特定の海域におけるタンカーの航海性能をシミュレーションしました。本船が航行する6航路の結果を見ると、NAPA Voyage OptimizationとNorsepower Rotor SailsTMを併用した場合、平均19%のCO2削減が認められ、NAPA Voyage Optimization単独では約10%のCO2排出量削減に貢献しました。 最も興味深い結果は、ニューヨークとアムステルダムを結ぶ大西洋航路で、Norsepower Rotor SailsTMとNAPAのVoyage Optimizationの組み合わせにより、平均28%のCO2排出量削減を実現しました。また、NAPA Voyage Optimizationの単独では12%のCO2削減に貢献しました。シンガポール-アンゴラ間の航路では、風力推進装置と航路最適化システムとの相乗効果では、排出量を17%削減し、航路最適化が11%貢献しました。 船主や運航会社にとって、この共同研究はとても意義のあるもので、海運業界が脱炭素化のプレッシャーにさらされている今、風力推進技術に投資するビジネスケースをより強化するものになります。風力推進と航路最適化が、今日の海運業界の脱炭素化に不可欠な柱であることはすでに分かっていました。しかし、この研究がもたらしたのは、特定の航路で2つの技術がどのような結果をもたらすかについての正確で詳細なデータです。海運業界にとって、これは自信を持って前進するために必要な重要な洞察と保証を提供するものです。 第2段階:設計と運営のリンク強化 シミュレーションから得られた知見をもとに、設計段階で船舶の性能を予測し、さまざまな海象や気象条件にどのように対応できるかを検証する方法も模索しています。フェーズ1の分析では、最も有利な風条件に遭遇するためには大幅な航路変更が必要であることが示され、プロジェクトのフェーズ2ではこの共同研究がさらに進められることになりました。2023年5月に開始されたこのフェーズ2では、より幅広い船舶の反応と気象条件のデータを開発することで、Norsepower Rotor SailsTMで設計された船舶の性能をさらに高める方法を探っています。 例えば、このプロジェクトでは、船体の横方向の力や動きについてのより高度な分析を行い、運航性能を向上させるための新たな最適化戦略を開発します。通常、船舶は「固定された」設計条件に基づいて設計され、穏やかな海況にシーマージン(天候による予想される平均的な性能損失)を加えたものとなっています。しかし、風力アシスト船の設計は、運航されることになるより強い風条件に適応させる必要があります。したがって、次のステップは、風、波、潮流などの「動的」条件を使用した仮想航海シミュレーションを組み込んで、実際の条件下で期待される船舶の性能を評価することです。さらに、SHI-ME社の船舶設計プロセスでは、すでに多くの船舶設計で使用されている従来の静的波浪計算に加えて、悪天候時の船舶の復原性をより考慮することになります。これには、NAPAから入手したビッグデータを船舶設計プロセスで扱う方法を開発することが含まれます。 NAPAにとって、このプロジェクトは設計プロセスの理解を広げ、航海最適化モデルの洗練度と精度を高めることになります。フェーズ1では、気象ルーティングが明らかに風力推進の画期的な変化になり得ることが明らかになりました。私たちのモデルが船舶設計プロセスに情報を提供するために使用されれば、その価値をさらに高める可能性があると考えています。 私たちのデジタル・ソリューションは、海事分野のあらゆるステークホルダーとの協力関係を強化することを可能にしています。フェーズ2は、船舶運航と船舶設計の間で継続的にフィードバックを行う事で、それをさらに実証することになります。船主にとって、これは単に燃料の節約や炭素原単位指標(CII)規制の格付け向上以上の意味を持ちます。また、新造船の運航性能が向上し、EEDI(エネルギー効率設計指数)などの規制への適合が容易になることも意味します。また、性能が向上すれば、港湾使用料の減免など、さまざまなインセンティブ制度が利用できるようになり、将来的に炭素税が施行された際には、大幅な節約をもたらすことになります。 NAPAの運航シミュレーション技術と、Norsepower社およびSHI-ME社の技術的専門知識を活用したこの共同研究は、すでに設計段階の早い段階で、商業上および運航上の意思決定に重要な知見と確信を与えています。私たちは、このプロジェクトのフェーズ2が、脱炭素化をさらに大きく前進させ、既存の技術を最大限に活用するための船舶の設計・運航方法を業界が改革し、そのビジネスにとって理にかなった方法で、地球にとって必要な変化を実現する手助けになると確信しています。 この共同研究は、私たちが力を合わせ、多様な専門知識を結集することで、関係者全員に良い結果をもたらし、業界全体に付加価値を生み出すことができることを実証するものです。SHI-ME社とNorsepower社とのパートナーシップにおいて、私たちは船舶の設計と運航、ローターセイル技術、ソフトウェアとデータサイエンスにおけるそれぞれの経験を組み合わせました。これは、コラボレーションによって実現できることのほんの一例にすぎません。NAPAでは、船舶の設計、安全、運航の間の点と点を結ぶユニークな立場にあり、同時にITとデータサイエンスの専門知識も持ち合わせています。NAPAは、その専門知識をフルに活用することで、持続可能な海運を支援するこのようなプロジェクトをさらに実現し、人、アイデア、技術を結びつけることでパートナーとともに革新していきます。 本件に関するお問合せ先:
Read Article8月 4, 2023
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