風を味方にする―どうすれば航路の最適化で船の「スピードリザーブ」を引き出せるのか
NAPA Voyage Optimization海運業界は変化しており、貨物を移動し、排出ガスを削減する必要があるということ以外に、不変なものはあまりありません。風力推進は船主がその両方を実現するのに役立ちますが、航路最適化システムの助けなしには行えません。風力推進は海運業界を変革する可能性を秘めていますが、多くの新技術と同様に、十分な検討とそれに見合った運用方法が求められます。
NAPA Voyage Optimization は、天候状況や無数にあるその他の制約条件に応じて、A地点からB地点までの最適な航路を見つけ出すシステムです。そのため、シミュレーションツールとしても利用でき、風力推進を利用した航海や船隊の最適化について深い見識を得ることができます。また、航路での帆の実用性をより明確にすることができる方法で、帆を張った船と海上をシミュレートします
要するに、航路最適化は帆へのの恩恵を最大限に享受するために不可欠なのです。
帆走がうまくいかない場合はどうすべきか?
場合によっては、ローターセイルの実用性が疑問視されることもあります。そこで難しい状況下では帆がどのように機能するか、シミュレーションをしてみましょう。最も分かりやすい例が、継続的に向かい風に遭遇したときです。仮に全長230メートルの石油タンカーに高さ約30メートルのローターセイルを3基つけた(あるいはつけない)として、スリランカとバングラデシュ間でシミュレーションを行います。NAPA Voyage Optimizationを使えば、船速12.4ノットの船での2港間の航海をモデル化することができます。帆を装備、又は装備していないモデル船でこの航海を行えば、省エネ装置を搭載することが実はあまり有益ではないことが分かるでしょう。
シミュレーションでは、帆を装備していない船の場合、燃料消費量は118.7トンであるのに対し、帆を装備している船の消費量はその3.5%多いという結果でした。風力推進は様々な角度で推力を発生させることができますが、向かい風、又はそれに近い風の時は発生させることはできません。そのような状況では、帆はかえって船全体の抵抗を増加させることになります。
航路を可能な限り最適化し、それによって帆の効率が向上するかを見てみましょう。ただし、到着時間だけは変えません。
このような天候下では、まだ帆が燃費節約につながらないことが分りました。依然として帆がない船のほうが安く運航できるものの、最適化されていない航路に比べ、最適化された航路はどちらの場合でも燃料の節約をもたらすことに留意することが重要です。
私たちにできることとは?
では、私たちはこの状況に我慢して耐えるしかないのでしょうか?難局を切り抜け、好市況を待つしかないのでしょうか? 帆はあまり役に立たないため、別の方法で燃料を節約できるのでしょうか? 船の速度を2ノット下げたらどうなるでしょうか?
そうすると、面白いことが起きます。NAPA Voyage Optimizationがあれば、風力推進装置が搭載されていない船よりも、帆を張った船のほうが燃料消費量を抑えることができるのです。船が最短航路から外れることが許されるのであれば、このようなことが起こりえます。
帆を張った船にとって最適な航路では、速度範囲は8.2ノットから12.3ノットと、それぞれ8.3から11.1ノットより大きくなります。さらに、最適な航路も異なり、風を利用する船はより西に向かって航行します。
帆がついている場合、天候の影響はより顕著に表れます。有利な風を受けに行く(あるいは不利な風を避ける)ことができるポテンシャルがここでの鍵なのである、と信憑性のある仮説を立てることができます。減速航行により、船が航路と速度プロファイルを変えることができるため、このポテンシャルを引き出せます。私たちはこれを船の「スピードリザーブ」と呼んでおり、好天をとらえ、悪天候から逃れるために速度や航路に柔軟に対応できる能力のことを指しています。
シナリオを逆にするとどうなるか?
シミュレーションが悪天候の中で行われたことを確認するため、チャートを反転させてみましょう(例:航行方向の変更)。ルーティングや減速することなく、なお風力推進の実用性を確認することができるのでしょうか?きっとできるはずです、なぜなら反対方向に進もうとしているのだから。
結果、この特定のケースでは、帆がついているだけで性能が4%向上することが判明しました。従来の方法で航路最適化を行うと、どの程度の節約になるかをシミュレートすることもできました。もちろん減速航行することで、船のスピードに大幅な余裕をもたせ、航路を大きく逸脱し、帆を最大限に活用することもできます。
最終判断:風力推進のポテンシャルを最大限に引き出すためには、速度と航路の逸脱に対する柔軟性が必須である
これらのシミュレーションは、風力推進が予期せぬ利益をもたらすことを証明しています。船が帆を張っている場合、船はより天候に影響を受けやすくなります。そのため、より速度と航路の逸脱に柔軟に対応できるようになれば、風力推進装置によってもたらされる価値が高まります。シミュレーションでは、正しい方法、つまり風力推進装置と航路最適化の組み合わせにより、船がコストのかかる強い向かい風を回避し、大幅な排出削減とコスト節減が可能であることを示しています。
※こちらの投稿はLinkedInに投稿されたものです(英文)。
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