ECAを回避することが必ずしも利益につながらない理由
by Claus Stigler, Product Owner of NAPA Voyage Optimization, NAPA Shipping Solutions
Why dodging ECAs doesn’t always pay off – NAPA(以下、和訳)
排出規制地域(ECA)は、MARPOL規則で規定されているように、船舶に対して厳しい排出規制を設けている海域です。バルト海、北海、イギリス海峡、北米ECA、米国カリブ海、ハワイ諸島、中国など、世界中の多くの沿岸海域にECAがあります。
このMARPOL規則によりECA内を運航する際に、排気ガス洗浄装置であるスクラバーを設置するか、低硫黄燃料タイプに変更する必要があります。低硫黄燃料タイプはECAの外部で許可されている重硫黄燃料タイプに比べて高価であるため、船舶は2種類の燃料を搭載し、ECAに出入りするときに燃料を交互に使用する傾向があります。
船がECA内の距離を最短にする傾向にあることをデータで明らかに
ECAに関して船舶が通常どのように運航しているのかを知るために、私たちは過去1年間の中央ヨーロッパとアメリカ東海岸を結ぶ大西洋横断のタンカー船の航海情報を調査しました。(NAPA Development Coach) Kimmo Laaksonenは、以前にブログで運航の最適化によってMRタンカーがどれだけ燃料を節約できるかという観点から言及しました。
その結果、大西洋を横断する航海では、平均15.9%の燃料費節約の可能性があることがわかりました。私たちがどのようにデータを使用しているのか、ご興味のある方は、このような最適化の調査を実施する背景についての詳細を、以前のブログ記事よりご覧いただけます。
今回、私はこれらの船舶のECAに関する運航パターンを見てみました。このBaltic Exchange ルートでは、航路の両端にECAがあります。これらの47隻のタンカーの運航を見ると、排出規制区域への出入り口が明確に繰り返され、船舶はECAで運航をする距離を最小化する傾向がわかりました。
© Kepler, © Mapbox, © OpenStreetMap
運航ルートはECA内の距離を最小化する傾向を示していますが、最も費用対効果の高いルートはさまざまです。
これは、ECA内を運航する距離を最小化することが船舶間で一般的であることを示唆しています。この最適化ロジックは、より高価な燃料タイプの使用を最小限に抑えることでコストを節約することを目的としています。しかし、同時に総運航距離が長くなる可能性がある場合、この方法はコスト削減のモデルとなるのでしょうか?
ECA距離を最短にしても、必ずしも節約効果があるとは限らない
出航時と同じ出発時刻、到着時刻、天気予報を用いて、これらの航海を適化したところ、天候に左右される航路の方が、ECAへの出入りの際の変動幅が大きいことがわかりました。この最適化では、ECAの内外で異なる燃料の種類と、それらの燃料のコストの違いを考慮します。そして、最も費用対効果の高いルートを算出します。今回の研究では、ECA内では30%高い燃料の価格差を使用しました。
運航した船とウェザールーティングの代案を比較した結果、燃料の種類による価格差は、純粋にECA内での運航距離を短くする要因にはならないことがわかりました。それどころか、ウェザールーティングを行った場合、ECA内での運航距離がより長くなり、それでも平均15.9%の燃料費を節約することができました。さらに、最適化された航路では、BF5以上の荒天時の時間が平均9.8%短縮され、運航の安全性が向上します。
繰り返しにはなりますが、燃料の価格はそれぞれ異なり、さらに天候も異なります。
したがって、ECA距離を最小化することに必ずしもこだわらず、現在の燃料価格と現在の天気予報に基づいて、各航海を個別に決定する方がよいでしょう。
This blog post was originally published on LinkedIn on April 12, 2021.
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